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お涼の酉籠 概要

亜寡町よりも南に位置する芹澤村(せりざわむら)という農村での話。

この村にお涼(おりょう)と平次(へいじ)という夫婦がいた。
平次の家系は非常に裕福であったが、お涼は早くから両親を無くし一人身であった。
しかし、平次の両親はお涼の貞節の様を理解しており心から二人を祝福していたのだった。

お涼は炊事洗濯の全てに心を尽くして平次に仕え、平次もそれを幸せだと感じていた。

しかし、この平次には好色という致命的な欠点があった。

幸せな生活を過ごしていたにも関わらず、いつの頃からか平次は夜ごと桜小路に出向き、
親から得た生活費を全て遊女に注ぎ込むようになっていった。

お涼はこれに嘆き悲しみ、平次の両親に涙ながらに訴えた。
これを聞いた平次の両親は大層怒り、彼を家の座敷牢に閉じ込めてしまった。

お涼は悲しみの中、それでも牢の中の平次に献身的な世話をし続けた。

平次の居ない一人寂しい家での生活を少しでも紛らわそうと、
お涼は小さな鳥を飼い鳥籠の中に入れて過ごしていた。

実はお涼は腹の中に平次との子を身篭っていたのだった。
その事をお涼から告げられた平次は、


「お前の献身的な行動には感謝をするばかりだ。
今までの自分の行ってきた事が愚か過ぎて悔いる毎日だ。
お前と私の子の為にも心を入れ替えて 懸命に日々を生きるつもりだ。
だから、どうかここから出してくれるように頼んでほしい。」


と涙しながらお涼に訴えた。

その事をお涼から聞いた平次の両親は


「二人の子供が平次の悪癖を治すキッカケになるかもしれない」


と思い、平次を座敷牢から解放した。

平次との生活が待っていると喜んでいたお涼であったが、
それも束の間。

平次は何事も無かったかのように相変わらず桜小路に出向き、
遂には家にも帰らない日々を過ごしていた。

流石に怒り狂ったお涼は、身重の体のまま桜小路の女郎小屋に乗り込んだ。

ようやくある部屋で見つけた平次と言い争い大喧嘩になった末、
お涼は平次に階段の上から突き落とされ、大怪我をしたのだった。

そしてそれが原因でお腹の子を失ったお涼は、
平次を恨み、嘆き悲しみながら小鳥と共に暮らしていた。

流石に不憫に思った平次の両親は、不甲斐ない我が子を絶縁し、
一切の金銭援助を打ち切ったのだった。

しかし、この両親の行いを逆恨みした平次は怒り狂い、
お涼の元へ行き、問答無用で斧でお涼の首を斬り落とし、
鳥もそのまま殺してしまったのだった。


それから、暫くたってから。
平次は夜な夜なうなされるようになった。

食欲も生気も徐々に無くなり、遂には床についたままになった。

夜になると唄が聞こえてくる・・・

お涼の声の唄が聞こえてくる。



「私の籠の中の鳥は何時出れるのでしょうか・・・」


「首を落とされた私の後ろには誰がいるのでしょうか・・・」



日に日にやせ細る平次は、まもなく苦しみながら息を引き取った。


不思議な事に、平次は布団の中でボロボロになった鳥籠を
抱えるようにして絶命していたと言う。

それはお涼が飼っていた鳥が入っていた鳥篭であった。





「紫陽花奇譚・お涼の酉籠より」

お涼の酉籠 歌詞

作詞:お優美  作曲:狐邇  編曲:奏手候


愛する貴方と籠で

新しい酉を飼うのさ


何故…


愛する貴方は今日も

見知らぬ遊女の元へ


鳴いていた酉の声が聞こえなくなる


酉を返して 

返しておくれ

酉籠の外へ

出しとくれよ

この籠ごと返して


聞かせてあげる 

籠の外へ出たいと

中から突いて

鳴き声を上げる

壊れた籠は

二度と開かない

壊したのは誰


ウシロノショウメンダァレ


…誰?